日々の器

こんばんは。今年は結局7月に梅雨が明けないようです。6月に入って空梅雨の様子でしたが、心配した様に後半になって豪雨が続いています。今日も蒸し暑い天気で体調が思うようにすぐれません。関節のあちこちに水分がたまっているようで、疲れがどしーっとおんぶされたように覆いかぶさっています。皆さん、お元気でしょうか。

工房は十草の飯碗を作っています。すっかり「工芸店様」の定番になったようです。有り難いと感謝しております。食器作りの者にいとって飯碗が世に通じるほど冥利に尽きることはありません。高価な抹茶碗より何より誇らしく思うものです。

食器の舞台は「にちにち」の普段の生活です。特別な装置で美しさを演出するような場所では有りません。私たちはこの「にちにち」をこよなく愛し、そこにこそ美を発見し、また美を創造する所と心得ております。人それぞれの暮らしが有り文化があります。好みも色々です。私たちの作る食器に巡りあえる機会も多々あるとは思いませんが、心をつくし作ることで伝えたい心を感じて頂けると自負しております。

20年前でしょうか、私の作った少し黄色かかった粉引きの飯碗が当時多くのファンを頂くことが出来ました。追加の注文を頂くとうれしく誇りに思いながら作ったことを思いだします。この飯碗で少し珍しいことが有りました。あるお方がどこで手に入れたか知りませんが熊本で工芸店をオープンされる友人に「このよう飯碗がある」と手渡されたようです。工芸店のオーナーは是非この御茶碗がほしいと思い、北は北海道からあらゆる手だてを講じて探したそうです。何か月もかけてやっと私どもの工房を探しあてたそうです。

電話の奥で「やっと見つけたぁ!」と歓声を上げていました。早速50個の注文を頂きましたが、ようやく厳選した作品を送ると「上品な京都のお菓子のよう!」と喜んでいただけました。

心が通じることを実感致しました。私は私たちの作る食器を「作品」と呼びます。食器にいちいち作品なんてとお思いでしょうが、日々の芸術作品と考えています。
「心を形に」を真剣に考えてこれからも食器を作って参ります。

日々の器

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成熟社会の実現は

こんばんは。長く梅雨が明けない状態が続いています。各地に大きな影響が出始めているようです。山口県の災害もひどいですが、このような状態が続くと東北の冷害が一段と心配になってきます。総選挙もあり、日本列島がぐらぐらと根底から揺り動かされているようです。地殻変動が起こるのでしょうか?人心は大きなマグマを抱えているようで、そこをしっかりと解決できる方向性を持った政党に国民は力を与えたいと望んでいます。

戦後日本は大衆社会を産み高度成長を遂げました。70年、80年一億総中産階級を産み出し世界の日本、ジャパンイズナンバーワンとまで言われました.
戦後官僚政治の結晶,黄金時代だったと思います。横並びの消費がブームを産み、あらゆる国内消費の原動力にもなったと思います。

実は陶芸ブームもまた長く続いていたのです。もしかすると私が陶芸を志した時昭和49年から、かれこれこの数年前まで長く続いていたのではないでしょうか?気が付けば私もとっくに50を過ぎて、同期の人から全く展示会の案内が来なくなっています。不義理を続けてきたせいもあるのでしょうが、それだけではないようです。みんな達者で活動しているのでしょうか?

私たちの工房は元気ですよ。お陰様で忙しく仕事に追われています。自分の事ばかりにかまけていて、陶芸界が今どのようになっているのかさっぱり状況がつかめていません。年に一度クラブの人たちを連れ窯業地を見学に行くのですが、衰退どころか全く違う町になってしまったようにも感じています。

今までの概念では未来が構築できなくなっています。断然面白くなってきた!と思うのは、自分の中の若造が強がってほざいているだけなのかもしれませんが。しかし民主無血革命なんて成熟社会の実現を少し夢見ている夏の夜なのです。

今日の工房は火曜教室でした。雨の中6人のメンバーがそろい、各自の作品作りに没頭していました。夕方蜩の声が山々に響き、しっとりと心が濡れていきました。

成熟社会の実現は

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陶芸界の淘汰

こんばんは。関西は未だ梅雨が明けていません。昨夜は梅雨前線が南下してきて、猛烈な雷と豪雨でした。窯焚きはこんな夜が一番ハラハラドキドキです。いつ停電になるかと心配で眠れません。電気窯はもちろんそうですが、うちで焼く灯油窯もバーナーがいつ止まるか気が気では有りません。すたっふMさんは昨夜錦窯(きんがま、上絵を焼く窯)を焚いていたそうで、心配で眠れなかったそうです。朝起きが遅れたのもそのせいだったのでしょうか。

工房は大忙しです。巷は三連休で高速道路が1000円と有って夏休み初めての休日、今も渋滞で家に帰れない状態なんじゃないでしょうか。そのようなことは全くと言っていいくらい関係なくこちらは進んでいます。工芸界に入って祭日が休みになんてところは一つもなかったように思います。今も私どもは日曜日以外は休みでは有りません。すたっふMさんがこの工房にまだ通って修行していた頃は、日曜日も仕事をしていました。鉄は熱いうちに叩けと言われますが、大体三年は休みなんてないものでしょう。石の上にも三年。よく言われますが、3という単位は重要な意味をもっていると考えています。

弟子を見る時も3か月を単位で様子を見、色々と判断します。早いうちに肩を叩いてあげなくてはいけないこともあるのです。才能なんておこがましいことは言えませんが、真摯な姿勢は三日でも分かるのですが、余裕をもってまたその人の人格も尊重して三か月と決めています。

しかしそのようなことも言ってもおれない状況がこの業界を覆っています。育てることをもっと真剣に考えなくてはいけないのでしょう。昔のように「見て学べ」なんていってられないのでしょう。何人かの弟子を面倒見ましたが、育てることの難しさと費用に合わないことの多さに難儀を感じます。

陶芸を世間はどのように思っているのでしょか。昔と違って容易に窯を持てるようになったのはいいのですが、それでどうか?といってもやはり修行に掛かる時間はとてつもなく多く、その間誰が面倒を見るのか?親がかりといっても今の時代そのような余裕は誰も持っていません。即戦力にはなかなかなれず、工芸学校を出て何が出来るのでしょうか。高い授業料を払いそれでこれといって身についていないなんて、こんなリスクの多い業界に未来があるとはなかなか思えないのです。

それでも陶芸に見せられ一途にこの道を歩いていきたい。その様な夢を実現したいという若者がいないとは思っていません。どうにかそのような若者を育てられる環境を作りたいと思っているのです。

陶芸界の淘汰

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乾山写し「芙蓉形向付」に白化粧

こんばんは。暑い日が続きます。この頃は朝起きの時間を早め、一日の始まりも同じ様に早い時間帯に変えています。この暑さに耐える時間割を作っています。

工芸は早寝早起きが似合いますよね。昔ある有名な作家さんですが、夜お酒を飲んで気持が高まったといって、「よし、轆轤ひくよ!」って、夜中の二時から仕事をしたって、聞きましたが、、、。

私にはとんでもない、そんなことしたら身体の時間割が狂ってしまって、その後の仕事はどうにもなりません。人それぞれです。お酒飲んで仕事なんて、それもとんでもない。自分にはできません。仕事の内容にもよりますが、いたって健康的な仕事ですので。

早朝の光を受けること。身体時間というものがあって、それは25時間らしいですね。その一時間の誤差をどうしてリセットするかと言えば、早朝の光を身体に受ける事らしいです。でも私の従兄の画家ですが、長く昼夜逆転の生活をしていますが、いたって健康です。

これもまた人それぞれなのですね。やっぱり私は早朝派です。

工房はすたっふMさんが「幔幕紋深向こう」の絵付けを終えたので、釉薬掛けをして窯入れを急いでいます。また、乾山写し「芙蓉形向付」の型打ちされたものに白化粧を施しました。この仕事も何とか形にしたいと考えています。また、もうひとつ乾山「呉須鉄絵葵紋大鉢」の仕事も急いでいます。

格子紋湯呑が何とか目途が立ったので、今までの京焼きに新しく「呉須」の仕事を加えたいと思います。この仕事を発展させ「オランダ焼」まで持っていきたいと考えています。
仕事が仕事を産んで、人と繋がっていきます。新しい展開を面白く期待しています。

イノセント

こんばんは。甲信越は梅雨が明けたそうです。今日はここも一気に猛暑で、流石大阪!どこよりも暑さは負けへんでぇ、とすごい勢いでした。

昨日京セラドームで行われた「サイモン&ガーファンクル」のコンサートに出かけて来ました。1968年「卒業」のサンドトラックからのファンで、何と言っても70年「明日に架ける橋」はすごいアルバムでした。家に古いハイファイセットが有って、何度も何度も針を落として聞いた頃が思いだされて来ました。まだ中学生で英語の教材にうってつけとばかりにノートに歌詞を写しては、コツコツ訳して見たりもしました。

若者が抱く素直な言葉は、どこか自分の心をあの美しいハーモニーで表現してくれているようで、いつの年齢になっても感動を呼び起こしてくれます。
イノセント。この言葉が耳から離れませんでした。いろんなコンサートに出かけてきましたが、最も感動したコンサートのひとつです。二人の歌声が心の宝物になった瞬間を味わう事が出来ました。

宝物はしみじみ一人で味わうものだと感じました。話し合える言葉が見つからないのです。今日のこのブログもどうしようか、思案していたのですが。
家内と連れ添って30年になりました。SGのコンサートがある、と家内から誘いが有りました。手に入るかどうかわからないが、申し込んでみようと云いました。
いい思い出を作ることが出来ました。言葉にならない共通するシーンを二人で体験しました。これから色々な出来事の中で多くのSGサウンドが心の中で響いてくることでしょう。
イノセント。聖なる歌声を聴くことができました。有難うございました。

工房は今日火曜教室で、窯から出た作品をみんなで鑑賞し賑やかな一日でした。新しいメンバーも参加して、これから暑くなりますが秋に向けての作品作りに精を出します。

イノセント

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釉薬のテスト窯

こんばんは。湿気の多い状態が続いて、心身とも週末どっと疲れが出てきています。今日は格子紋湯呑のテスト窯を焚くのですが、窯詰めの時も集中が途切れることが多く、眠気が襲ってきます。午後6時無事窯を入れました。

今回は「呉須」(下絵の具で青く発色する)の流れを止めるために二種類の釉薬を調合しました。呉須は釉に溶け込んで美しい青を発色するので、どうしても灰が多い私どもの釉薬では呉須が釉薬と反応し易く、描いた線や絵が原形を留めにくいのです。そこで色々な調合を考えるのですが、本来の釉薬からあまり離れることはできません。また従来持っている透明感を残し、細かな貫入も残してとなると奥の手を使うしかないと思っています。

釉薬の基本的な立て方は、長石、石灰、珪石、カオリン、を5:1:3:1 にすると安定した透明釉が得られます。簡単な立て方で、長石と石灰でも釉薬は作れますが、少しの温度差で透明感が消えたり、融けなかったりと溶融点の範囲が少ないのです。でもっと安定した釉薬となると色々な柱を立てて溶融温度に幅を持たせるのです。

私共の釉薬は灰と長石で作っています。昔ながらの伝統的な釉薬です。灰といっても色々なものがあり、また種類によって成分が変わってきます。この京焼の灰は「樫」がいいとされています。酸化では黄色っぽく焼けます。柔らかなたまご色を作るにはこの灰が一番いいと思います。

今回この調合に藁灰を入れて見ました。藁灰は珪石分が他の灰より一段と多く含まれています。また石の珪石とは違った結晶体が有り、柔らかな質感を産みやすいとされています。

呉須の流れを止める方法は、長石分を増やす、硅石分で溶融点を上げる、カオリン成分で全体をマット化する、また呉須自体の溶融温度を上げる、などなど色々あるとおもいますが、今回藁灰を使って少し溶融点を上げてみたいと考えました。

さて、この調合で、今までの呉須の発色を残し流れを止めることができるでしょうか。結果は月曜日の朝、少しがんばっていきます。

釉薬のテスト窯

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梅雨に負けず

こんにちは。関西は紀伊半島に記録的な大雨が降っています。ここは雨の多い地方ですが、それでも経験したことのない豪雨に被害が広がっています。この地方の裏に位置する私どもは、豪雨や台風からいつも守られた状態になっています。
今年の梅雨も姿を現して来たようです。これからが本番のようです。

窯準備2009.7.8工房は教室の作品を焼く為、昨日は窯を詰めました。色々な大きさの作品ですが、無事平均に皆さんの作品を入れることが出来ました。

還元焼成で1280度まで上げてみたいと思います。今回は午後11時に火を入れることにしました。午前中別件の仕事が入っているので、その間をあぶり焼きに当ててみようと思っています。新しい焼き方なので、いつ終了するかは焼いてからにあると思います。

窯詰めが終わり先日作っていた「乾山写し芙蓉紋平向付け」の型うちの為、轆轤で三個素地を挽いておきました。今日型うちをしてみたいと思います。
これから、すたっふMさんも来て、格子紋の湯呑のテストを始めます。呉須の流れを止める準備に入ります。

梅雨に負けず

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視界が広がって来ました

こんばんは。湿気の多い日が続いています。身体の疲れもなかなか抜けない様です。こんな日は睡眠が一番なんでしょうが、蒸し暑く寝苦しい日が続きます。窓を少し開けて寝るのですが、山の冷気はかなりの湿気を伴っていて気が付けば身体に相当負担があって、よけいに疲れが残ってしまいます。
梅雨が晴れない限りこの冷気は取れません。温かいものを取り身体を冷やさないように心懸けています。

工房は教室の作品が溜まってきたので窯の準備に入りました。土曜日に施釉したものを今日手直ししています。還元で焼く予定です。この4年は京焼を専門に作ってきたので酸化窯に慣れてしまいましたが、本来私どもはもっぱら還元窯を焼いていました。特に長石釉を中心に鉄絵や辰砂、時に青磁、磁器などを主に作って来ました。最近HPに京焼以外の今までのものも売れるようになってきました。すたっふMさんがこれはというものを引き出してきて、写真を撮っています。数も少なくなってきましたが当時も細かなところまでこだわって作っているいいものをHPに掲載して参ります。

作品の多くは今まで個展や工房のギャラリーで売って来ました。二年前からHPに作品を掲載し販売するようになり、ウェブ上で物を売っていくにはそれ相当の投資をしていかなければなりませんでした。昨年はそのことに時間もお金もかなり掛けてきました。

最近「和食器」のサイトでトップに位置するようになり、徐々に変化が起こって来ました。この変化とともに私どもは従来してきた仕事を再認識し、新たに京焼で開発してきた多くの作品も一歩進めていくことでしょう。

地平線が広がったと思います。今までのキャリアを元にステップの効いた感覚のいい作品を多く作ろうと思っています。

視界が広がって来ました

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ライン建設中です

こんばんは。7月になって本格的な梅雨になって来ました。各地で大雨が災害を起こしていますが、皆様の所は如何でしょうか。ここ関西は最近激しさを増してきたように思います。しとしと降る梅雨なんてもう何年も経験していません。激しい変わりようは今の世の中を象徴しているようで、大きな変化を予感します。

人の心と自然とはどこか連動しているようです。大雨、猛暑。この夏は厳しいと思います。混迷が続く政治もいよいよ末期の様相を呈してきました。私はいつも変化を求めるタイプなので、どんどん激しく変わることを求めていますが。

工房は色々な仕事が重なって来て一度整理しなくてはならない状況です。今日は乾山陶器葵紋大鉢の水挽きを市ました。この位の大きさ、と手で示された大まかな要望だったので、何個か高低差を付けて、三個を水挽きしました。

HPから色んなメッセージを頂きます。京焼の検索より、最近は「和食器」部門でかなり優位な位置にいるので、そこから入ってきてくれる人が多くいます。そのせいか京焼に限定する仕事よりも幅広く色々な作品を購入してくださいます。

私共の仕事の中にひとつ大きな柱があります。紅い釉薬で「辰砂釉」と呼ばれるものです。独自に長年掛けて作り上げてきた釉薬です。今日ある材料の中で最高とされる灰や長石を使うのですが、昨今の材料不足は深刻で、この釉薬に使われるものもすでに廃業されたところもあって、どうしても入手できない状況です。在庫が少し残っているので10キロ位は釉薬を作ることができます。最近HPからも辰砂釉の作品が売れるようになってきて、今一度この作品が作れるラインを検討しています。

工房は今大きく3本のラインを建設中です。全体がスムーズに機能するにはかなり手間が必要だと思います。
弟子入り希望者、歓迎いたします。

“かろみ”が身上の削りです

こんばんは。九州各地で大雨になっています。観測史上最高の雨量を記録したところも多くあるようです。沖縄が梅雨開けとなると、西日本は梅雨前線が本格的に覆いかぶさるようになり、ドシャ降りの様相呈してきます。台所に蟻が避難してきたのも大雨の予感でしょうか?巣穴が幾つも潰れているのでしょうか。明日から7月ですが、梅雨は20日前後まで続きそうです。

今年は時間が取れなくて本格的な雨になる前に、とゆの掃除をすることが出来ませんでした。屋根の取り合い部分に裏山の落ち葉が溜まっていて、とゆが詰まってしまいます。大雨の度雨漏りが激しく、家族から不満の声がしきりに聞こえてきました。今日は危ないことは十分承知で、小雨降る中、地下足袋を履いて屋根に上がりました。ビックリするぐらい溜った落ち葉をなんとか掃除してきました。

京焼 市松文湯呑 削り仕上げ昨日貝塚市商工課観光協会から今度駅前に「貝塚ぶらんどショップ」をオープンすることになり、出店依頼がありました。三間間口のかわいらしいお店ですが快諾しました。早速今朝12点ほどの作品を持っていきました。明日7月1日からオープンするようです。貝塚にお越しの際は是非お立ち寄りください。

工房はなんやかんやで時間が割かれましたが、昨日からの続き「格子紋湯呑」を削っています。私どもの削りは磁器のように全部皮を削っていきます。一般的には陶器は高台付近を削り出して終わるのですが、磁器や特殊な陶器は全面的に削って形を出します。薄皮を剥ぐように、まるで鉋で柱を削るようにしていきます。これ以上は削れないというところまで、中の形状に合わせていきます。この湯のみで一つ削るのに20分近く掛かってしまいました。

昔、ある仏師さんから聞いた話ですが、仕上げでノミを置くときはこれ以上削ると仏さんから血が出るというところまで削った時です、ということでした。
この話は私どもにも通じる様に思います。薄皮を剥ぎながら、これ以上削ると器から血が出てくるというところでカンナを置きます。「かろみ」という事を身上に作っています。
一度手にして頂くとつたわるものがあると思います。どうぞよろしく!

2009年前期を反省して

こんばんは。六月も明日で終わりになります。一年も半分が過ぎました。今年は昨年から続いている仕事、乾山陶器がようやく形になりつつあります。一歩ずつですが振り返ると確実に進んでいることを感じます。先週土曜日に乾山写し芙蓉紋鉢の型が出来ました。「轆轤型打ち」という特殊な技法を使う作品です。型を使った作品を多く作って来ましたが、今回初めて轆轤型打ちをします。型は土で丁寧に作り仕上げされています。今回は前半私が作っていましたが、急ぎの仕事が入ったので、すたっふMさんにバトンンタッチしました。彼女は大学で工業デザインを勉強していたので、このように写真から形を起こす事を得意としています。スパーリアリズムの絵画や彫刻をさせると面白いもかもしれません。

この型は複雑な形をしていて、また土も多く使っているので乾かすのにじっくり時間をかけていきたいと思います。すっかり乾いたつもりでも土は中心に多少水を含んでいるものです。あせって表面だけ乾かしてしまうと、中心にある水は外に抜けず、ずうっと乾ききらないでいます。それを知らずに素焼きをすると、中心に残った水が膨張し爆発してしまいます。型は木端微塵に跡形もない状態になることもあります。この梅雨の時期雨が降るといつまでも乾かない状態が続きます。あせらず乾燥して参ります。

呉須絵格子紋湯呑の削りを始めました。呉須の流れることを止めようと考えています。釉薬の調合を替え、長石の量を多くしようと思います。また硅石(けいせき)分も入れてみたいのですが、これらの分量が多くなれば今までの釉薬の様に透明感や細かな貫入(かんにゅう)が消える可能性があります。そのさじ加減が難しいのですが、呉須の流れを止めるには仕方がないと思っています。

速やかにテスト窯を焚くことが今の一番の仕事です。

夕焼けに染まって

轆轤 切立湯呑こんばんは。梅雨の晴れ間、夕焼けに染まった空にジェット機が鮮やかな竜雲を描いていきました。海が近いせいで夕焼けが中間色で柔らかな光を放ちます。各地で夕焼けの美しいところが多く有りますが、ここもなかなかの色合いを醸しだします。作家は自然におおきな影響を受けます。私の作品の多くはここの自然の色合い呈しています。見えるものはすべて自分の中に有ります。感動するものはすべて自分の中にあるものです。作家はその内と外にある感動を表現します。いつか見た光景が作品に投影されていることを自身発見することはよくあることです。今日もいい夕焼けを見ることが出来ました。懐かしい故郷の夕焼けです。

工房は昨日窯から出た格子紋湯のみをもう一度作り始めました。呉須が流れることはどこかで承知していたのですが、この仕事で釉薬を今一度点検し、新しい釉薬を作ることから始めらいと思いす。今後呉須と鉄絵の仕事を増やしていこうと思います。今までの釉薬の理解ではどうしてもこの呉須の流れがとまらないので、新しく釉薬を作ってみます。少々の温度の変化にも耐えてくれるよう、また通常の釉薬と遜色ないよう、心を砕いています。
今日は轆轤で湯呑を16個作りました。

夕焼けに染まって

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百合形鉢 焼き上がり

こんばんは。夏至から三日、今日は一番日暮れが遅い時期ではないでしょうか?こんな山に囲まれたところでも、7時や8時とは思えないくらい光が残っていました。夢中で仕事をしていると気が付けばすでに8時、と思いました。今日が最長の夕方と感じました。色々な意味で6月は楽しみ多い季節ですね。日本は雨の多い国ですが、その中でも雨期と位置づけられる季節はこの時期だけです。世界でも特殊な気候だと思います。故私たちが経験することは水の文化そのものだと思います。そんな思いでこの季節を色々な角度から楽しんでいます。

昨夜サボテンの花が咲きました。月下美人ではないのですが、この時期になるとそれも夜咲きます。何とも亜熱帯を感じて、いよいよ心が妖しい開放感になってきます。

窯出し21年6月24日 工房は昨日焼き上げた窯を開けました。よく焼けたまずまずの内容なのでしょう。いろいろ考えていかなければならない作品も有りましたが、内容は素直な窯でした。

ブログから注文された「百合型鉢」はすっきり焼くことが出来ました。格子紋湯呑に関してはこれからのテーマです。呉須が流れることをどのようにして止めるか、失敗を繰り返しながらこれから考えて参ります。

今年になって土が若干変わっています。この事は今まで良しとしてきた感覚に微妙な変化が有って、それに十分対応が出来ていません。
思考の軸を一本増やし世界を広げることに致しました。


京焼 仁清百合形鉢

窯準備2009,6,22

こんばんは。大分湿って来ましたね。今週は梅雨らしい天気になるようで、各地に大雨注意報が頻繁に出てきます。この山間は湿気がひどく、じとうぉっと床下から水分が噴き出てきそうな感じです。南風が吹くと玄関の土間はしっかり湿ってきます。四季のなかで一番過ごしにくい季節でしょう。

台所に蟻の行列がいくつも出来ています。うかうかと食べ物を出しておくと、気がつけばすっかり蟻の餌食になっています。徹底して片付けをするようになりました。

窯準備2009.6.22仕事場は先週からMさんが来て絵付けしている格子紋湯呑、千鳥紋薬味入れ、そして百合型鉢を焼く準備に入りました。釉薬掛け、その後の始末仕事に追われていました。

午後8時、窯詰めも無事終え火を付けて12時まであぶり焚きします。その後朝までそのままし、今回は火曜教室もあるので早めに温度を上げることにします。朝、早起きして温度を上げていきたいと思います。

古清水から始めた京焼も今年で4年、先週の幔幕紋深向付けが一つの区切りとなります。これから乾山陶器に入っていきます。かなり文学的な陶器です。当時の文化の理解が大いに必要になってくることでしょう。

ヒーリング・パワー

こんばんは。今日は夏至です。今年もこれから後半に入っていきます。12月クリスマス冬至まで後6か月は、この国にとっても大きな転換期になってくるでしょう。秋までには必ず選挙が行われ国の形が大きく変わりそうな予感がします。世界の流れが大きく変わっているのですから当然と言えば当然なのでしょう。人類の意識転換が始まっています。力の時代が終焉を迎えているように、新しい意識の台頭が現れてきています。

「ヒーリングパワー」こんなキーワードがしきりに心に響いています。時代は益々過酷さを増していく様に思います。この力が人々を救っていく様に思います。これはなにも特殊な力だとは思いません。誰にでも宿っている力だと思います。気づくことで発揮されるパワーだと思います。

仕事場で瞑想の時間を作っています。ただ轆轤の前に座るだけですが、深く呼吸を整え胸に意識を集中し、力を抜いていきます。何も特殊な技法を用いて目的を持ってしている訳ではありません。しかしかなり気分がいいので癖になり、気づけば歩いている時もどこでもまたどんな時にでも目を閉じ深呼吸して意識を胸に集中するようになりました。

お手当てといいますが、人の手にはかなりのヒーリングパワーが出ています。ヒーラーと謂われる人たちがいますが、何も特殊な力を持っている特別な人ではないと思います。ただ自分の力に気づけばいいだけだと思います。その力を他の人や他の生命に伝えてみることで、より力が増していく様に思います。

これからの芸術はこのパワーの表現だと思うこの頃です。

ヒーリング・パワー

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合格

こんばんは。梅雨入りからこんなにまとまって雨が降らないとこれからの水不足が心配になってきます。来週から雨が降るって聞きましたが、どうでしょうか?また今年もとびきりの猛暑がありそうです。太陽の光が昔と変わったように思います。肌に切り込むように痛さを感じるのですが。皆さんはどう思いますか?紫外線がかなりきついですよねぇ。目が痛くなります。

フォトンベルトという事を聞きました。一万年に一度銀河にあるこの地帯に地球が入ると大きな変動が起こるということらしいですが。そのようなことが頷けるような気もします。何もかも温暖化に結論されるのも、誰かの意図のように思うのですが、確かに時代も地球規模、宇宙規模で大きな変動期に入った様に思えます。

そのような思いの中でも、工房はいつもの様に仕事を進めています。ようびさんに送った「幔幕紋深向付」が気に入ってくださったようで、早速お付き合いのある料理屋さんに持っていかれたそうです。かなり難しい仕事です。作り手もあの手この手できわどい所まで追いつめた仕事ですが、この様な感覚を理解しまた使いこなすとなるとよほどの感性の持ち主でないと出来ないと思います。高いレベルで作り手使い手が一つになるということは、お客さんにとって最高の贅沢と思うのです。また受ける側(お客さん)もこのところを理解できるとなれば文化の高みを感じるのですが。そのような場面を夢見て今回は力を注ぎました。いずれそのような場面に出会えることを期待しています。

六月も後半に入ってくると、公民館の陶芸クラブも秋の公民館祭、市民文化祭に向けて徐々に力が入ってきます。スタートの早い方々は一つまた一つと作品を作っています。これからもまた暗黙の競争が始まり、かなりヒートアップしそうな感じです。

想いを形にすることは私たちも生徒さんも変わりなく尽きない興味がそこにあります。

合格

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乾山写し「色絵牡丹紋向付」の型作成

こんばんは。この時期山間部ではにわかに大雨が降ることが多く有ります。今日も今まで何ともなく晴れていたかと思うと、あっという間に大粒の雨が南風と共にしきりに降り始めました。工房の看板犬ななは、落ち着きなく工房内をうろうろしています。息が激しく鼓動も早く、外に出たがったり机の下にはいったり。どこかで雷が鳴っているのでしょう。私たちには感知できませんが、犬は早い時期から反応しているのでしょう。そうこうしているとこの大雨でした。高野山あたりで雷がなっていたのでしょうか。

日本の梅雨の雨粒の大きさは世界一だという話を聞きました。この話に頷けるような大きな雨粒でした。

工房はすたっふMさんも来て忙しく仕事を進めています。Mさんは千鳥紋が描き終わったのでしょう、格子紋湯呑の下書きに移っています。私は昨日の続きで、乾山写し「色絵牡丹紋向付」の型を作っています。牡丹と云いますがどこか芙蓉にも見立てることもできるので、この時期にもまた使えると思い作っています。琳派の画題に多く使われるひとつでもありますが、立葵や夕顔、芙蓉、また牡丹といった、似たような花が多く有ります。私はこの一連の花に、「彼岸と此岸の境」と云う感覚を覚えるのですが。

日本陶磁史にこの様な感覚で食器を作った陶工は乾山以外誰もいません。このデザインの卓越さは文学を深く理解し、多くの教養を身につけて初めて出来ることのように思います。
徳川の体制も落ち着き平和な時代、元禄期に色々な町人芸術が起こりました。その中でも得意な存在として「乾山」は位置付けられるでしょう。絵画が陶器になったと思うような作品は、今までの陶芸から言うと使用に耐えるのか?と思えるのですが、それ以上に芸術に昇華させたことは否めない事のように思います。
今回はこの鉢を写しながら多くの事を考えてみたいと思います。

百合型鉢の削り仕上げ

京焼 慢幕文筒向こんばんは。今日も清々しいいいお天気でした。夏至は今年21日ということで、今は夕方がこの山間の村でも長く、夕日がとてもきれいです。午後7時といっても陽が少し残っていて、さわやかな風が工房を通り抜けていきます。

工房の忙しさはどんどん増して来ました。今日は昨日焚き上げた耐火煉瓦窯を出しました。幔幕紋深向こうです。色々な施行の一つの結果です。その中から10個を選んで工芸店様に送りました。かなり本歌に近くなったと思いますが、この時代にどの様なシュチュエーショん使われるかで、微妙な好みが変わってくるように思います。まずはようびの意見を聞きたいと思います。

すたっふMさんは、このしばらくは工房に通ってきます。呉須の絵付けが続きます。今日は薬味入れの千鳥紋を描きました。それから格子紋の湯呑、そしてまた幔幕紋と続きます。

百合型鉢は削り終えています。昨日窯焚きと同時に削り仕上げをしました。一つの削り仕上げをするのに、約1時間は掛かります。昨日は夜9時近くまで仕事をしまいました。これも空梅雨のおかげでしょうか。身体に湿気がなく快調に仕事を進めることができます。乾きの順調に進み、窯の準備がすぐにできます。

この季節はもう秋の器見本作りに入ります。今年は乾山がテーマなので早速新しい作品の型を作り始めました。

京焼 仁清百合型鉢

仁清百合型鉢

こんばんは。梅雨入りになって、今は小康状態なんでしょうか。こんな梅雨は後半に大雨になって、またどこかで川の事故があり崖崩れがなど多発するのでしょうか。空梅雨も困りますが集中豪雨も怖いですね。近年局部的な豪雨という特徴的現象が起こっています。何もかも温暖化に結び付けて説明させるもの、何か意図を感じるのですが。

工房は漫幕紋深向こうの窯焚き準備で、すたっふMさんも手伝いにやって来ました。前回の失敗を教訓に、今回は窯を空かしてこの作品だけで焼くことにしました。全部で21個、何とか15個を取りたいと思っています。小さいながら温度差が激しいのでちょうどいい温度帯にだけ置くことにしました。午後7時火が入りました。明日午後1時ころまでに炊き上げる予定です。

窯入れを終え、早速「仁清写し百合型鉢」を作ることにしました。ブログからの客付きとなりました。納めている工芸店は在庫切れということでした。いつ追加されるか未定といわれたらしいです。大変残念という趣旨のコメントが私のブログに付きました。私どもの作品を多く集めておられ、また楽しみに使ってくれているそうです。作り手としては光栄で、何ならこちらで作らせてもらいましょう、という事になりました。季節もちょうど百合の香りが馥郁と漂ってきます。今日はちょうど時間ができたので、百合鉢を作ることにしました。

仁清百合形鉢

仁清百合型鉢

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市松文湯呑

こんばんは。週末はホタル狩りに多くの人がやってきます。昨夜公民館から帰ってくる時も闇の中から突然人が現れてきて危ない目に合いました。開放的になっているのでしょうが、少しのマナーも必要だと思います。網を持ってきてホタルを取っている人もいますが、どうでしょうか?昔ほどたくさんいないので、保護した方がいいと思うのですが。自分中心の世の中、無くなってからでは遅いのですが。このあたりの公衆道徳がこのくらいなのでしょう。自然の摂理と対照的なように感じます。

工房前の川にもホタルが飛ぶのですが、このスポットはなかなかレアな所であまり人も来ません。川の音、蛙の鳴く声が闇に充満して、霧の中にぽうっと光が点滅しています。

西洋と日本ではホタルの見方が違うと聞きました。西洋は光が灯る世界を見、日本人は消え入る光を見ると聞きました。私はこの時期の闇を堪能しています。日本人から闇の世界が消えて久しくなりました。都会の闇はうすら寒く恐怖を覚えますが、田舎の闇は匂い立つ生命の一体感を覚えます。田植えも終わり亜熱帯の様相が益々濃く、しきりにアジアを感じます。

今年は笹百合の不作年で、いつもの目ぼしいところにも全然見ることが出来ませんでした。こんなに不作は近年珍しいです。昨年は30本ほど家に活けてあったように思うのですが、寂しい限りです。少し山深いところまで足を延ばして探しに行こうと思うのですが。

工房は京焼格子紋深向こうを作っています。今日は削りを終え40個を完成することができました。単純で品格があって古来より親しまれてきた紋様です。この紋様で思い出すのは桂離宮のふすま絵です。綺羅で彩られた品格の高い文様が印象深く記憶に残っています。雅紋様の代表的な一つだと思います。この深向こうを御湯呑として使ってもらうという企画です。呉須の色合いを少し鮮やかにして、今に使える器に致しました。オシャレな感覚で使ってもらえたらと思い作りました。

市松文湯呑

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格子紋深向こうの水挽き

こんばんは。東北北部を除いて日本列島は梅雨入りに入ったそうです。今朝からここも雨模様です。山あいの梅雨は時にはストーブを持ち出すくらい肌寒く、なかなか身体の調子を維持するのに苦労する時期になります。台所では蟻の行列が出来ていました。大雨が近づくと巣の移動が始まるのでしょうか?家の中を横断する光景が見えます。

この季節の楽しみの一つは、何と言ってもホタルでしょう。まだ出てきてはいませんが、この時分は遠いところからでも多くの人がホタル狩りにやってきます。ここのホタルは源氏も平家もいて混合型の分布として興味があるようです。また姫ホタルもいて、お盆過ぎまで楽しむことができます。娘が幼稚園に勤めているので園児に見せてあげたいということなので、今年は少しホタルを捕まえてみようと思っていますが。

工房は幔幕の深向こうも終え、格子紋深向こうの水挽きに移りました。午後からの開始でしたが2時過ぎに来客があり、今日も集中した時間が確保できませんでした。細切れの時間の中、同じ調子で轆轤をすることは難しいことですが、そうはいってられません。明日はしっかり進めていきたいと思っています。

今の工房は仕事に集中することを一番に心がけています。案外人がやって来るので、うまくこなしていきたいと考えています。注文も多く頂いているので、展開を急いでいるところです。先月は幔幕の深向こうで躓いてしまったものですから、何とか成功に持っていきたいと思っています。

心の切り替えと集中に焦点を絞って明日からまた張り切って参りましょう。

格子紋深向こうの水挽き

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幔幕紋深向こうの仕上げ

こんばんは。今日から梅雨入りのところも出てきました。6月も10日になると田植がいっせいに始まります。今日も多くの田んぼで苗の準備をしていました。つばくろが低空飛行ですり抜けて行きます。山は緑が濃くなり山百合の香りが漂っています。夜はホタルが間もなく飛び交うでしょう。何とも生のなまめかしさが漂う季節になって来ました。

工房は相変わらず忙しさにかまけています先週から持ち越しの、幔幕紋深向こうの仕上げをしています。今日で終わる予定ですが、午後から「火曜教室」が入っているので何としても仕上げるつもりです。

昨日からすたっふMさんが幔幕紋の下絵描きにやってきています。今日も午後から来て下絵のあたりを描いていましたが、教室とかぶって、またHPの注文の発注に追われてなかなか思うように進みませんでした。集中して仕事をする時間の確保は難しいものです。

焼き物を生業として34年になりますが、この世界にはビックキーワードが二つあるように思います。一つは「待つ」、もう一つは「受け入れる」。かなり受動的な言葉ですが、この意味は深いと思います。創造というとどうしても能動的な態度を強調されますが、いたって陶芸は受け身で、窯という特殊な世界を通じて初めて作り上げることができるものです。今までやってきたすべてを窯に預け切り、炎の力で違う次元に昇華させていきます。作者がどこまで意図した世界が実現しているのか、イメージのかい離をどこまで許容できるのか、作ったもの、出来上がったもの、生まれ出たもの。ただただ神秘に帰趨させるのは作者の逃避だと若い時は思っていましたが、今はもう少し違った世界に生きているように思うのです。

陶芸は尽きぬ夢を追い懸ける世界の様に思います。この年になってなお青年のように。

幔幕紋深向こうの仕上げ

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京焼 薬味入れ

こんばんは。清々しい初夏の気候を今日は満喫致しました。日差しが眩しく目に飛び込んできて、いよいよ夏が来た思いが、パッと心身のドアを開いたように感じています。そこはかと活力が漲ってきたようで、うれしく思っています。

午後工房に帰ってくると、ようびから留守電が入っていました。至急とのこと、何事かな?駄目だしなのか、注文なのか、さてはまたまた難儀なお話なのか?

早速電話を掛けてみると、納めた「桜紋かわらけ盃」の再注文でした。何かのお返しとお聞きしていましたが、お客さんが喜んでくださったのでしょうか。それとも数が足らなくなったのか?後者でしょう。あわてて5枚あるかと聞いてきたのです。普通このような注文は再度5,6個の追加注文があるものです。計算していた人数より多く来られたのでしょう。もちろん数は多く作るようにしているので、快諾致しました。すんなり仕事を進めることが出来ました。

仕事は薬味入れを作っています。昨年作ったものでなかなか好評を頂いているようです。色々なブログにこの薬味入れの事が書かれていて、使い手の気持が伝わって、作り手とのギャップを感じて面白く読ませて頂きました。

今日は蓋を削り、身と合わせています。細かな仕事ですが面白いものです。明日には完成させたいのですが、どこまで出来ますか。がんばりましょう。

京焼 薬味入れ

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一つのいのち

こんばんは。山の緑が日に日濃くなってきました。山帽子の白さが際立ち始め、梅雨も近づいてきたようです。昨日妻が早くもササユリを採って来て、こんな小さな蕾でも咲くのかと思うほどですが、早速花瓶に活けていました。三センチ足らずの蕾が咲くには、三週間くらいかかるかも知れません。楽しみです。

六月の楽しみは咲く花がいい香りに満ちていることです。今日もそんな話をしていると、それは昆虫を呼ぶためでしょう、と言うことのようです。間のなく田植えも始まり、色々な生き物が豊富に出てくる季節です。私はこの季節が最高に好きです。植物、昆虫、小動物、色々な生き物が我が家にやってきますが、何とも共に生きている感覚になって、命が一つになることができます。間のなくホタルも飛び交うでしょう。六月は楽しみの多い季節です。

幔幕の深向こうを再度挑戦しています。前回の窯は陣立てに問題があって、火の引きが悪く、いったん目的の温度近くに達したのですが急に温度が下がり出し、頑張って相当な時間をかけ我慢しながら焼き切ったのですが。還元がかかり、わずかな所で酸化に戻ってしまいました。色々反省するところがあるのですが、いつものことですがどうしても通過しなければならない失敗というものがあるようです。

何とか最短で成功させようと思う意志と裏腹に、失敗にはまっていく形というものがあるようです。抵抗しきれない運命を感じる瞬間です。

一つのいのち

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窯焚き

こんばんは。今週もまた始まりました。昨日に続き初夏を思わす好天気です。日曜日は実家に行って、両親とともに過ごすようにしています。月曜日に戻ってくるととても工房が新鮮に思えます。工房も曜日によって違った顔になるのが面白いです。今日は午後から慢幕紋深向こうの釉薬掛けです。数は20個と少ないのですが、後の処理がなかなか手間入りです。すたっふMさんが手伝ってくれて丁寧な後始末が出来ました。今回も「耐火煉瓦小窯」で焼きます。
土曜日にこの窯を提供してくれた「藤原陶芸店」が来て初窯の作品を見て一言、「奇跡の様な焼けやね。」ですって。これはなかなか説明しにくいところなのですが、本来一発目にこの様な作品を焼くことが実は困難極まりないことなのでしょう。直炎式の窯なのでいくら小さくても、火前が有り、天井、根っこ、火裏がちゃんとあるのです。作品の位置が10センチも違うと焼け具合の違ってしまいます。この窯が昨年の暮れに入って、かれこれ四か月になろうとしても、考えが決まらずなかなか焚くことが出来ませんでした。イメージが出来上がるには相当の試行錯誤が必要でした。どうしても焼かなくては結果が出ないというところまで考えた末、出てきた作品だったので、私たちにとって有意義な結論でした。実はこの結果を導き出すには最低でも何回か焼きこまなくては普通出てこない作品なのです。初窯で出してきた事に、「奇跡」と云ったのでしょう。面白い話です。

この様な事は運命を決める重要な瞬間なのです。焼けるか焼けないかで大きく世界が違ってきます。今の私たちには何回も試行錯誤を積む時間はありません。一回で目の前の世界を開いていかなければなりません。キャリヤが生きるかどうか。やってきた事の積み重ねが生きたものとして実現されてくるのか、勝負どころとしては、大変面白いところです。

今日の慢幕紋深向こうはある意味勝負の掛かった、重要な窯になっています。慎重に窯詰めをし、先ほどから焼き始めました。明日午後二時頃には焼き上がる予定です。

窯焚き

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「かろみ」の展開

こんばんは。ゴールデンウィークも後半になって来ました。好天気が続いているせいでしょうか、また高速道路も格安とあって行楽地は大変な混雑の様子です。といっても私どもはいたって平常で、たまに迷い車が入ってくる程度の静かな時を過ごしています。この連休を利用してか、休耕田になっているところに今年作付けをするのでしょう、遠くに耕運機の音が響いています。

工房は土曜日の続きで、慢幕深向こうの仕上げを終えました。手間のかかる仕上げにもここまで来ると何とか要領を得ることが出来てきました。30個の注文ですが、今回は20個の作りで、焼け具合で10個から15個くらいの納めと思っております。


京焼 慢幕文筒向

この深向こうの特徴は華奢な作りと極上の軽さにあります。深向こうなので持った時の感覚が大変重要になって来ます。また普段使わない器ですのでお箸の使い方がいつもの様な調子でなく、その事の面白みがこの器の特徴にもなっています。はっと驚く軽さがお料理に対する期待感を増してくれるでしょう。

用の美といいますが、この事は何も民芸の専売特許という訳でもありません。日本感覚の器を突き詰めていくと、おのずと行きつく世界がある様に思います。用美(ようび)は暮らしの創造というところに入っていくと考えています。茶の世界も然り。私の作る器は普段使いの器としてあまり適さないかも知れませんが、何もかもを削ぎ落として、唯いのちの鼓動のみが息づいている、そんな器を私は目指しているのです。

「かろみ」の展開

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