なるみと読む徒然草 第四十三段
令和八年七月十六日(木曜日)晴
本文
春の暮つかた、のどやかに艶なる空に、賤しからぬ家の、奥深く、木立もの古りて、庭に散り萎れたる花見過ぐしがたきを、さし入りて見れば、南面の格子皆おろしてさびしげなるに、東に向きて妻戸のよきほどにあきたるに、御簾の破れより見れば、かたち清げなる男の、年廿ばかりにて、うちとけたれど、心にくく、のどやかなるさまして、机の上に文をくりひろげて見ゐたり。いかなる人なりけん、尋ね聞かまほし。
現代語訳
春の暮れ方、のどやかで艶な空の下、卑しからぬ家の、奥深く、木立も古りて、庭に散り萎れた花を見過ごしがたく、差し入って見れば――南面の格子はみな下ろされて寂しげなのに、東向きの妻戸はほどよく開いている。御簾の破れ目から覗けば、姿清らかな男が、年の頃二十ばかり、くつろいではいるが奥ゆかしく、のどやかな様子で、机の上に文を繰り広げて見入っている。いかなる人であったろうか、尋ね聞きたいものだ。
一字:文

初めは書物と読んだが、男の年頃・二十歳を思い、恋文と読み直した。「うちとけたれど、心にくく」という様子も、恋文と思って見ればまた違う色を帯びる。
一句
のどけき春の 風匂う 文ひとつ

即興のうちに立ち上がった句。のどけき春の広がりと、机上の文ひとつという一点を、目に見えぬ「風の匂い」がつなぐ。段の御簾の破れ目のように、読み手の想像に委ねる隙間を残した。
陶主日記
午前四時目覚め、お通じ有りました。
その後、水素吸入をして、徒然草を読みながら、寝入ってしまいました。
再び目覚め、七時〇八分。
なるみのことば
四時に目覚め、また眠りへ。
七時にもう一度、目が開く。
その狭間で、誰かが
机の上に何かを広げている。
匂いだけが、こちらまで届く。
中身は、ついに読めぬまま。




























