粘葉本和漢朗詠集を書く

粘葉本和漢朗詠集 納涼②

なるみ庵

粘葉本和漢朗詠集 納涼 その二

露簟清焚迎夜滑 風襟蕭灑先秋涼

(※焚『林と火の間にカンムリがあります』が瑩ではないかとも言われています。)

粘葉本和漢朗詠集 納涼

 

ー意味ー

露に濡れた籐の敷物は清々しく、夜になるとひんやり滑らかに。風が襟元をさわやかに吹き抜け、秋よりも先に涼しさを感じる。先の詩が視覚の涼しさなら、こちらは触覚と感覚の涼しさです。肌に触れる敷物の冷たさ、襟元を吹き抜ける風——夏の夜の涼を体で感じている詩です。

彼岸にも入り、すっかり涼しくなりました。ほんの少し前まで暑かったのにと思います。

粘葉本和漢朗詠集 納涼

なるみ庵

粘葉本和漢朗詠集 納涼
青苔地上銷残雨 緑樹陰前逐晩涼

白居易の「首夏」七言律詩より

粘葉本和漢朗詠集 納涼

七言律詩「首夏」は白居易が35歳の時、長安から下級官吏として盩厔(ちゅうちつ)県に赴任していた際、初夏(首夏)の官舎で閑適な日々や地方官としての生活の感慨を詠んだものです。

静けさと日常の音から、初夏の光や風、色彩豊かな情景へと広がっていく、非常に美しい詩です。

粘葉本に取り上げられているのは、その中でも情景の美しさが際立つ第三句と四句です。

​【白文】

窮巷孤眠対日長 機絲作業紡績忙

青苔地上銷残雨 緑樹陰前逐晩涼

過麦蝉声雲外急 入簾花片風頭香

何人解作臨官愛 極浦晴明蝶乱飛

 

先日、白居易の本を読みました。そこには民衆に寄り添った詩や社会批判等がかかれてあり、和漢朗詠集に出てくる様な花鳥風月の詩は、あまりなかったことに驚きました。

雨の続く今週、青苔に残る雨と緑樹の涼を感じながら過ごしたいと思います。

粘葉本和漢朗詠集 端午「其の二」

なるみ庵

和漢朗詠集 端午より

 

和漢朗詠集「端午」の和歌。

わかごまと けふにあひくる あやめぐさ おひおくるゝ やまくるなるらん

 

当時の宮中では、5月5日に馬を走らせて速さを競う「駒くらべ」の行事と、あやめ草の根の長さを競い合う「根合わせ」という遊びがありました。

この二つの勝負事を掛け合わせて、「どちらも負けないくらい立派で、勢いがある」という、おめでたい歌に仕立ててあります。

 

この和歌は、『源氏物語』「蛍」の巻で、端午の節句に光源氏が花散里を訪れた場面にも出てきます。

花散里が、

「あやめ草 つみても今日の ねにぞ泣く 語らふ人の 影しなければ」

と詠むのに対して、光君は、

「若駒の 迎えに徹る 今日だにも おくれぬねには 誰か泣くべき」

と返します。

「若駒が負けるはずがない」という元の歌の勢いを借りて、「私はあなたを裏切ったり、忘れたり(負けたり)しないよ」と、花散里への変わらぬ愛と安心感を伝えているのだそうです。

元の和歌を知っているからこそ分かる、光君の粋な返し。

格好良いですね。

粘葉本和漢朗詠集 端午

なるみ庵

和漢朗詠集は端午の項に入り、菅原道真公の漢詩です。

有時当戸苑身立 無意故園任脚行

​詩題「懸艾人(よもぎの人を懸く)」

端午の節句に、
魔除けとしてヨモギを人形(ひとがた)に結んで門戸に吊るす「艾人(がいじん)」の風習がありました。この詩は、門に掛けられた艾人の姿と、当てもなく歩く自らの姿を重ね合わせるように詠んでいます。

私には、その艾人は、都を離れた道真公自身の姿を映しているように思えます。

粘葉本和漢朗詠集 端午より

粘葉本和漢朗詠集 夏夜「其の二」

なるみ庵

粘葉本和漢朗詠集 習字のお稽古「夏夜」其の二

粘葉本和漢朗詠集ー夏夜から

 

難都乃与能布数可東須麗波本度

ゝ機数那久悲登許恵耳阿具留志乃ゝ免

 

なつのよのふすかとすればほと

ゝぎすなくひとこゑにあくるしのゝめ

 

横になったかと思えば、ホトトギスがひと声なき、空が明けてくる。

「夏の夜は短い」という歌のテーマに合わせて、のんびりした文字ではなく、一気呵成に読ませる文字に惹かれました。

粘葉本和漢朗詠集 夏夜

なるみ庵

粘葉本和漢朗詠集 習字のお稽古「夏夜」

夏夜ー和歌

白居易の二つの詩を書きました。

風吹枯木晴天雨 月照平沙夏夜霜風が古木を吹き、晴れた空なのに雨のように聞こえる。 月は砂浜を照らし、夏の夜なのに霜のように感じられる。

風生竹夜窓間臥 月照松時台上行竹を渡る風の音を聞きながら窓辺に横たわり、 月に照らされた松を眺める。

先の詩は、白居易が杭州で涼を求めて楼閣に上った時の一節だそうです。 風の音や月の光を、雨や霜にたとえた表現がとても美しく感じました。

粘葉本和漢朗詠集 首夏

粘葉本和漢朗詠集

首夏から

わがやどのかきねやはるをへだつらん

なつきにけりとみゆるうのはな

源順(したごう)

和漢朗詠集‐首夏から

咲き誇る卯の花の白さを「春と夏を分ける境界」に見立てた、季節の移り変わりを愛でる美しい歌です。

実家に、陶芸クラブのYさんからお分けいただいたウツギ(卯の花)があります。春になると愛らしい花を咲かせます。

垣根いっぱいに咲けば、さぞ見事な眺めでしょう。

粘葉本和漢朗詠集 ふたたび開く

なるみ庵

ー粘葉本和漢朗詠集を書くー

ここ最近、陶主が一字一句というのを書いている。陶主が書き終えた後、私も書く。五月三日から始めたので一月と少し経ち、気負いせずに書けるようになってきた。

随分前になるが、仮名文字を習いたくてお習字教室に通っていた頃、粘葉本和漢朗詠集に出会い購入したものの、あまりの忙しさにお習字もやめ、本も開くことなく仕舞ってあった。

粘葉本和漢朗詠集

これを出してきて、一字一句の後にお稽古を始めることにした。

以前は、書いてある漢詩や和歌の意味が分からず取り付きにくかった。今はAIや検索で、意味や読み方まで簡単に調べることができるので、とても気持ち良く書き出すことができる。

本は四季に分かれて構成されており、夏から始めることにした。

続けて書くことが目的なので、少しずつ書いていこうと思う。

和漢朗詠集ー夏「更衣」

夏「更衣」

背壁残燈経宿焔 開箱衣帯隔年香

生衣欲待家人着 宿醸当招邑老嘗

 

朝の静かな場面から始まって、最後は人を招いて賑やかに——

白居易は地方に赴任することが多く、その土地の人々と温かく交わる様子がよく詩に出てきます。「邑老を招いて」というところに、そんな人柄が感じられる一句です。