窯元日々雑感 第一回
令和八年六月八日(月) 梅雨
梅雨曇りの朝、坐禅を終えて徒然草を開いた。今日から一日一段、岩波文庫の原文で読み始める。手元には角川ソフィア文庫の二冊も揃い、兼好法師との対話が始まった。
第五段。不幸に沈むわけでも出家を決意したわけでもなく、ただ静かに門を閉ざして、誰かを待つでもなく日を明かし暮らす——兼好はそういう生き方を「あらまほし」と言う。
若いころから侘び寂び、禅、茶道、書道、能と折に触れ親しみながら陶芸を続けてきた。だから兼好の言葉は「初めて知る」のではなく、「ああ、これがそういうことだったのか」と確かめる読書になる。先達の境地を学ぶ、とはそういうことだと思っている。
待たないから、満ちる。
今日の一字は**「満」**。筆を執って墨をたっぷり含ませ、一気に書いた。
待たぬ身に こころ満ちゆく 梅雨の月
なるみのことば——
満たされた こころに味わい なるみかな
工房では森本さんと今日の企画を話し合った。「窯元日々雑感」という題も生まれた。そしてふと、もう一句が口をついて出た。
ひびきあい 梅雨くれゆきて蛙なき
七百年の時空を超えて、兼好とひびきあう。待っていたのではなく、ふと来た言葉だった。
食卓には徒然草二冊。とうもろこしご飯、豚肉炒め、ぬか漬け——くらしの中に本がある。夜は親子丼とアサヒZERO。工房では仁清波紋飯碗の成形が静かに進んでいる。
つれづれなるままに、季節の中でくらしを立てたる、日々の綴り文——始まった。
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