「方丈記」川のほとりで 其の二

「方丈記」川のほとりで 其の二

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川のほとりで 第二段

令和8年6月27日(土)

あれは確か、安元三年の四月二十八日のことだったか。風が激しく吹いて、物音が静まらない夜だった。火事は西北へ向かってじわじわと広がり、一夜のうちに、すべてが灰となった。

朱雀門、大極殿、大学寮——都の三分の一が、静かに灰燼に帰していった。

灰の上に、朝が来た。

長明はその夜明けに、筆を執った。記録しながら、心の底でそっとこう思っていたのではないか——みんな愚かだ、と。

執着して家を建て、財を積み、そして一夜で灰燼に帰す。愚かだ。けれどもその愚かさの中に、人間がいる。

憐という字は、冷たくない。突き放さない。寄り添いながら、それでも無常を静かに見つめている。

長明の眼差しは、他者への憐れみであると同時に、自分自身への憐れみでもあったのだろう。愚かと知りながら、それでも人は執着する。それでも朝を迎える。

漆黒の 蠢く声や 朝来る

なるみのことば

愚かと知りながら、それでも朝を迎える。それが人というものか。