白磁の出番ですよ

白磁の出番ですよ

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こんばんは。日中は蒸し暑さが残りますが、やはり夜になるとひんやりとした秋の風が部屋に入ってきてほっと溜息が出ます。部屋のどこかにいるのでしょうか、こおろぎや鈴虫の音が心を癒してくれます。

一昨日は満月でした。ラジオで中秋の名月と言っていたのですが、どうも季節感が合わないような気もします。朝夕の散歩道に萩が満開に咲いていました。ススキはまだまだ穂も出ていない状態で、この時期ではねぇ、お月様にお供えしたくてもできません。どうも季節感がうまくマッチングしていません。新暦で暮らしながら旧暦で暦を味わう。日本情緒は旧暦で、普段は新暦で。日本人は複雑に季節をコーディネートして暮らしています。ややこしいですね。ちなみに今日は立待月。昨日はいざよい(16夜)月。私はいざよい月が一番好きです。この月に似合う器が私の目指すところです。満たされていないところがかっこいい。食器の原点かもしれません。

そう、もちろん日本の器には季節があります。9月、この時期どの様な器が似合うのでしょうか?難しいところですね。夏と秋の中間でこれという器が見当たりません。染付なら月と兎、撫子紋、秋の七草、等々。でもね、それならお彼岸が過ぎてからで十分な気もします。9月は暦術から言えば土用にあたります。色は黄色。秋は白。器選びから言うと、もちろん私の独断と偏見ですが、侘び寂びた白磁です。李朝があるならそれに越したことはありませんが、伊万里でもいい。存在の薄いさみしげな器。

26年前ここに引っ越してきたとき、縁の下で見つけた白磁の花瓶があります。薄ネズミ色で焼けが甘く、お!李朝では?と思わす風情がある。秋になりススキを投げ入れたら、これが似合う。縁側に家内が作ったお団子を供えてみる。我が家のお月見にぴったりと嵌った。裸電球の明かりが障子に映え、奥の部屋から幼い子供たちの声がする。庭で鈴虫が泣いている。ゆらりゆらり山から満月が上がってくる。何とも贅沢な満たされた時間がそこにはあった。懐かしいな。

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