灰も渥も使いよう

灰も渥も使いよう

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こんばんは。桜の開花が普段と違っています。気温の変化が桜のセンサーを狂わせているのでしょうか?いつもなら先に咲き始めるところが後先になり逆転している開花している状態です。私自身もうまく季節に乗っていかない様に感じています。

工房は乾山陶器の釉薬が解決して、色々な作品の見本出しになりました。乾山の釉薬はどちらかと云えば灰マットな釉薬です。一番苦労するのはどの灰を使うかです。調合自体は簡単な構造になっているのでしょうが、化学的に調合された灰、合成灰を使っての調合ではきれいに仕上がるのですが何かもの足りなさがぬぐえません。

八木一夫先生は、「灰も生きている。」と表現されていましたが、ここでいう「生きている」は、灰の渥(アク)の事を言っているのです。焼物で使う灰はアク抜きがされたものを使います。紺屋灰という灰があります。紺屋さんが染めでアクを使い、その残りの灰を焼物屋が使うという昔ながらのリサイクルです。今では灰自体も貴重品になっています。そこで科学的に調合された灰も時々テストで使ってみるのですが、今回使ってみて何か物足りなさを感じたのは、やはり灰特有のアクがない事だったと思います。昔からアクも使いようと云われています。アクは釉薬本来の色合いにあまりいい影響を与えませんが、と云ってアクを全て殺してしまうと、焼もの独特の釉薬や生地の焼き色がうまく表現されません。

今回色々なテストをして一番適した釉薬は、私共で青磁釉として調合し粉引きにも使う陶石立ての灰釉でした。天草陶石6、特選いす系灰4、簡単な二成分立ての調合です。

私にはなかなか想いれのある調合なのですが、今回これが乾山陶器に使えるとは深い因縁を感じます。私が乾山陶器から始まっていたら、きっとこの灰には巡り合っていないでしょう。適した原料に巡り合うということは、すでに目指す焼き物が出来上がったということに等しいと思います。

色々な原料に巡り合って来ました。今となっては貴重なものが多くあります。私しか持っていないものもたくさん所持しています。30年もまたもっと前から巡り合った原料が、この仕事のために必要だったと思われる瞬間があります。この様な出来事に会うたびに陶芸の奥深さを感じるこの頃です。

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