乾山陶器の特徴-白化粧

乾山陶器の特徴-白化粧

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昨日と打って変って暖かな一日でした。神戸の町並みがきれいに見えていました。空気が澄んでいるんですね。大阪湾も穏やかで船も見えるぐらいでした。昔子供がまだ幼かったころ、神戸が外国だと思い込んでいたらしく今日の風景はその様に見えていました。大阪湾は黒潮の支流で南から北へ、泉州沖を通って明石に向かって流れています。大阪の冬は懐に湯たんぽを抱えているように、温暖な気候に恵まれています。大阪湾をちぬ(黒鯛)の海と呼ばれているように、黒鯛がたくさん取れるのです。これから三月には「いかなご」の漁が始まり、本格的に春を迎えます。

工房は乾山陶器の試作を作っています。昨年テストした土にいくつか種類別に食器を作って、白化粧を施してみようと思います。乾山陶器の大きな特徴に白化粧があります。乾山窯は大きく二つの違った焼き物の流れを持っています。楽焼きや上絵の軟質陶器と鉄や呉須で描かれた高火度陶器です。初期の頃乾山窯は白化粧をベースにした、所謂「絵高麗」を主に作っていました。この陶器は今でいう中国華北にある磁州窯系の焼き物で、灰褐色の胎土にカオリン(磁器の原料)をベースにした白泥を生掛けし、鉄絵の具で流麗なタッチの文様が描かれています。日本に茶道具として入って来たものを「絵高麗」と呼ばれるようになりました。乾山はこの絵高麗を手本に数多くの作品を焼いています。白と黒のモノトーンの世界が墨絵とイメージされたのでしょうか、光琳も手伝って多くの作品を残しています。乾山陶器には必ずと言っていいほど全ての作品に白化粧の技法が施されています。意匠的に掛けてあるものや素地の土に馴染ますように薄く施されているものなど、一見すると化粧と分からないような使い方をしています。乾山本人も白化粧にはかなりのこだわりがあって「秘伝」とさえ云っています。私もこの道に入ったころから白化粧には魅せられて来ました。乾山は絵画陶器を作ろうとしたのでしょう。彼の作品には釉薬で見せるという陶器は一つもありません。黒楽さえ必ず意匠が入っています。

仁清陶器と乾山陶器の大きな違いは、仁清は焼き物の手順を踏んで焼き物の作品を作っているのですが、乾山は彼の持っている「文化」を陶器に借りて作っているのだと思うのです。乾山陶器の難しいところは、実はそのことにあるのです。私はこの何年かを掛けて、古清水、仁清を写してきましたが、この陶器事態はかなり高い技術が必要でしたが、思考的には「焼き物」を作ることには変わりがなかったのです。しかし、乾山はこの手順を踏んで行くと似て非なる物が出来かねないと思っているのです。乾山の血に潜む「文化」とは?これから深く潜行して行くテーマです。

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