2010年 8月 の投稿一覧

伝統継承の難しさ

残暑お見舞い申し上げます。65回目の終戦記念日と盂蘭盆会でもある8月15日を今年も迎えることができました。戦後の記憶がどんどん失われていく中、テレビで学者さんたち、ジャーリストや作家さんたちがいろいろなことを語ってくれます。今年は全閣僚の靖国参拝もなかったようです。隣国の日本批判もなく、本来の静かな祈りを捧げることができました。山間の仕事場は、風の木立を抜ける音や蝉の声が木霊しています。 

一昨日、ひょんなことから35年も前の知り合いからメールを頂きました。HPを見てくれたそうで、懐かしく思い連絡をくれたそうです。

彼は瀬戸の窯業訓練校の同期で、地元赤津から通っていました。三歳位年上で卒業後は赤津の霞仙陶苑さんに就職されたと思います。私は卒業後静岡森山焼、中村陶吉先生の弟子につき、またその後赤津の菊陶園さんにお世話になりました。そんなことがあって、仕事帰りに霞仙に寄ってみたりもしました。轆轤に乗ってものを作っている彼をみて、「独立しないの?」「このまま職人さんでいるひと。」と勝手に思っていました。

窯業地に生まれた人の感覚と私のそれとは全く違っていました。35年も前のことです。オイルショックやニクソンショック、プラハ合意が有ったといっても高度成長の真っただ中、それも陶芸ブームで各窯業地は賑わっていた頃です。技術や才能を持たない私でさえ、未来に夢や希望が持てた頃です。陶芸で独立して、それも窯業地でもない場所で一家をかまえるなんて。今考えると「無謀」ですね。彼のほうが堅実で、当たり前な感覚なのでしょう。それから35年も経ったのですね。以前から赤津の様子は気にはなっていたのですが。頼りの内容は想像以上でした。

10年程前、陶芸クラブから瀬戸へ研修旅行に出かけました。愛知県立陶芸資料館を見学して、その後瀬戸の本業焼き窯元水野総一郎さん宅にお邪魔いたしました。彼とも訓練校同期で、懐かしく再開することができました。その時もすっかり窯場の様子が変わっていたのに驚きました。私が初めて本業窯に伺ったのは、まだ民芸ブームが盛んだった頃です。彼のお父さんも健在で、瀬戸一番の大窯を焼くところを見ることができました。そんな窯も今は小さなガス窯でした。

あれから瀬戸の状態はどんどん悪くなる一方と聞きます。どこもかしこも田園牧歌的な焼き物の懐かしい風景は見る影もなく、陶芸はいったいどうなってしまったのでしょうか?

彼の赤津の便りにも明るい未来はありません。「瀬戸で焼き物をするのは困難です。」って言っています。窯業地自体が淘汰されていく時代です。いろんなところで日本の伝統がすっぽり消えてしまう、デフレ世界の現状です。

伝統継承の難しさ

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鎮魂歌

お早うございます。世間はすっかり夏休みモードに入っていますね。今日から夏の甲子園、高校野球が始まっています。9時からの開会式をテレビで見ていました。工房は昨日から「染付磁器猪口、七寸皿、祥瑞鉢」を焼いています。朝、8時に温度調節をして、少し余裕のある時間帯に朝食をとりながら見ています。

この一週間腸炎ですっかり食欲が落ち、水分だけの日が続いていました。昨日やっと三食固形物を食べることができ、腹痛も徐々に治まりはじめました。15分おきにおきた腹痛も潮が引くような感じになってきています。体力、気力が痩せたせいか、甲子園で活躍する高校生がまぶしく見えます。今年はどのようなドラマが展開するのか、興味は尽きません。

この八月は日本人にとって特別な時間が過ぎていくように思います。広島原爆記念式に潘国連事務総長はじめルースアメリカ駐日大使が初めて参列しました。ルース駐日大使は「未来の世代のために、私たちは核兵器のない世界の実現を目指し、今後も協力していかねばならない」とのコメントを発表し、第2次世界大戦のすべての犠牲者に敬意を表した。ということです。また潘事務総長は被爆者や遺族ら出席者が見守る中、原爆死没者慰霊碑に献花。あいさつの中で「被爆者が生きている間に、核兵器のない世界という夢を実現しよう」と呼び掛け、国連トップとして核軍縮・不拡散を主導する決意を世界にアピールしました。戦後65年が過ぎました。現在日本は大きな転換期に差掛っています。多くの人類の犠牲の上に、今の私たちの生活、文化、生命が成り立っています。昨年オバマ大統領はプラハで「核なき世界」を宣言しました。この機運を世界的潮流にするためのも、私たち日本人は大きな人類の使命を付託されているように思っています。

八月は鎮魂の月です。終戦記念日と盂蘭盆会が重なるのも意味ある巡りあわせと感じます。静かに目を閉じ、胸に手を当て、自分の鼓動に先祖の魂を合わせる。人類の、また生きとし生きる全生類の生命に、自分の鼓動を合わせて一つの宇宙を感じる。

鎮魂歌

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暑中お見舞い申し上げます

こんばんは。厳しい暑さが続いています。体調管理に気を付けていたつもりですが、ウイルス性の突発腸炎で苦しんでいました。かれこれ三日程ただただ水を飲んで凌いでいました。きりきりと差し込む腹痛に何をする気力もなく、ごろごろテレビばかり見て時間をうっちゃっていました。その後遺症で腰を痛めたなんて、踏んだり蹴ったりです。これから八月、厳しさも増す中、どう踏ん張るか。思っただけで胃が痛みだしました。

日本列島はいろんな感情で蒸しかえっています。進む方向が見えないのも、不満の原因なのでしょう。長く続く国内デフレも限界にきているように思いますが。政治能力のない親方の元では、早くも行き詰まった日本を感じてしまいます。少し前までは、希望もあったようなのですが、これもそれもウイルス腸炎で萎びてしまいました。

まあ、ブログを書こうなんて思うくらいになったことは、元気が出てきたということなのでしょう。あまり復活の兆候が見られないので、昨日病院に行ってみたのですが、抗生物質のお薬よりも自然治癒を待ったほうがいいといわれ、大きなことになっていなければ我慢しようと思いました。下痢を止めるのもケースによって色々なのでしょう。今回は解毒の意味もあって、水分補給をしながら体調が戻るまで待つことにしました。普通なら次の日に復活してもいいと思うのですが、年のせいなのか完全復活まではまだまだ遠いようです。

工房は夏休みもとれずにいます。仁清写し「玄緒香合」のオーダーメイド頂いて作り始めました。11月にお使いになるのですが、このタイミングですでに作っておかなければ、間に合わなくなると思っています。かなり手間仕事の上、焼き上げて蓋と身が合わないことも多くあり、また身が細工上分厚いところがあり乾燥時に亀裂が入ることもよくあります。

今回は3個作っておきたいと思います。モチベーションが落ちないようにするのも、仕事のうちです。普段健康と思っていてもいろいろと付加が掛かっていて、思わぬところで体調を崩してしまいます。皆様もくれぐれもご自愛くださいますよう、暑中お見舞いと共にお祈り申し上げます。


玄猪香合

暑中お見舞い申し上げます

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