2009年 7月 の投稿一覧

日々の器

こんばんは。今年は結局7月に梅雨が明けないようです。6月に入って空梅雨の様子でしたが、心配した様に後半になって豪雨が続いています。今日も蒸し暑い天気で体調が思うようにすぐれません。関節のあちこちに水分がたまっているようで、疲れがどしーっとおんぶされたように覆いかぶさっています。皆さん、お元気でしょうか。

工房は十草の飯碗を作っています。すっかり「工芸店様」の定番になったようです。有り難いと感謝しております。食器作りの者にいとって飯碗が世に通じるほど冥利に尽きることはありません。高価な抹茶碗より何より誇らしく思うものです。

食器の舞台は「にちにち」の普段の生活です。特別な装置で美しさを演出するような場所では有りません。私たちはこの「にちにち」をこよなく愛し、そこにこそ美を発見し、また美を創造する所と心得ております。人それぞれの暮らしが有り文化があります。好みも色々です。私たちの作る食器に巡りあえる機会も多々あるとは思いませんが、心をつくし作ることで伝えたい心を感じて頂けると自負しております。

20年前でしょうか、私の作った少し黄色かかった粉引きの飯碗が当時多くのファンを頂くことが出来ました。追加の注文を頂くとうれしく誇りに思いながら作ったことを思いだします。この飯碗で少し珍しいことが有りました。あるお方がどこで手に入れたか知りませんが熊本で工芸店をオープンされる友人に「このよう飯碗がある」と手渡されたようです。工芸店のオーナーは是非この御茶碗がほしいと思い、北は北海道からあらゆる手だてを講じて探したそうです。何か月もかけてやっと私どもの工房を探しあてたそうです。

電話の奥で「やっと見つけたぁ!」と歓声を上げていました。早速50個の注文を頂きましたが、ようやく厳選した作品を送ると「上品な京都のお菓子のよう!」と喜んでいただけました。

心が通じることを実感致しました。私は私たちの作る食器を「作品」と呼びます。食器にいちいち作品なんてとお思いでしょうが、日々の芸術作品と考えています。
「心を形に」を真剣に考えてこれからも食器を作って参ります。

日々の器

この記事の関連キーワード

成熟社会の実現は

こんばんは。長く梅雨が明けない状態が続いています。各地に大きな影響が出始めているようです。山口県の災害もひどいですが、このような状態が続くと東北の冷害が一段と心配になってきます。総選挙もあり、日本列島がぐらぐらと根底から揺り動かされているようです。地殻変動が起こるのでしょうか?人心は大きなマグマを抱えているようで、そこをしっかりと解決できる方向性を持った政党に国民は力を与えたいと望んでいます。

戦後日本は大衆社会を産み高度成長を遂げました。70年、80年一億総中産階級を産み出し世界の日本、ジャパンイズナンバーワンとまで言われました.
戦後官僚政治の結晶,黄金時代だったと思います。横並びの消費がブームを産み、あらゆる国内消費の原動力にもなったと思います。

実は陶芸ブームもまた長く続いていたのです。もしかすると私が陶芸を志した時昭和49年から、かれこれこの数年前まで長く続いていたのではないでしょうか?気が付けば私もとっくに50を過ぎて、同期の人から全く展示会の案内が来なくなっています。不義理を続けてきたせいもあるのでしょうが、それだけではないようです。みんな達者で活動しているのでしょうか?

私たちの工房は元気ですよ。お陰様で忙しく仕事に追われています。自分の事ばかりにかまけていて、陶芸界が今どのようになっているのかさっぱり状況がつかめていません。年に一度クラブの人たちを連れ窯業地を見学に行くのですが、衰退どころか全く違う町になってしまったようにも感じています。

今までの概念では未来が構築できなくなっています。断然面白くなってきた!と思うのは、自分の中の若造が強がってほざいているだけなのかもしれませんが。しかし民主無血革命なんて成熟社会の実現を少し夢見ている夏の夜なのです。

今日の工房は火曜教室でした。雨の中6人のメンバーがそろい、各自の作品作りに没頭していました。夕方蜩の声が山々に響き、しっとりと心が濡れていきました。

成熟社会の実現は

この記事の関連キーワード

陶芸界の淘汰

こんばんは。関西は未だ梅雨が明けていません。昨夜は梅雨前線が南下してきて、猛烈な雷と豪雨でした。窯焚きはこんな夜が一番ハラハラドキドキです。いつ停電になるかと心配で眠れません。電気窯はもちろんそうですが、うちで焼く灯油窯もバーナーがいつ止まるか気が気では有りません。すたっふMさんは昨夜錦窯(きんがま、上絵を焼く窯)を焚いていたそうで、心配で眠れなかったそうです。朝起きが遅れたのもそのせいだったのでしょうか。

工房は大忙しです。巷は三連休で高速道路が1000円と有って夏休み初めての休日、今も渋滞で家に帰れない状態なんじゃないでしょうか。そのようなことは全くと言っていいくらい関係なくこちらは進んでいます。工芸界に入って祭日が休みになんてところは一つもなかったように思います。今も私どもは日曜日以外は休みでは有りません。すたっふMさんがこの工房にまだ通って修行していた頃は、日曜日も仕事をしていました。鉄は熱いうちに叩けと言われますが、大体三年は休みなんてないものでしょう。石の上にも三年。よく言われますが、3という単位は重要な意味をもっていると考えています。

弟子を見る時も3か月を単位で様子を見、色々と判断します。早いうちに肩を叩いてあげなくてはいけないこともあるのです。才能なんておこがましいことは言えませんが、真摯な姿勢は三日でも分かるのですが、余裕をもってまたその人の人格も尊重して三か月と決めています。

しかしそのようなことも言ってもおれない状況がこの業界を覆っています。育てることをもっと真剣に考えなくてはいけないのでしょう。昔のように「見て学べ」なんていってられないのでしょう。何人かの弟子を面倒見ましたが、育てることの難しさと費用に合わないことの多さに難儀を感じます。

陶芸を世間はどのように思っているのでしょか。昔と違って容易に窯を持てるようになったのはいいのですが、それでどうか?といってもやはり修行に掛かる時間はとてつもなく多く、その間誰が面倒を見るのか?親がかりといっても今の時代そのような余裕は誰も持っていません。即戦力にはなかなかなれず、工芸学校を出て何が出来るのでしょうか。高い授業料を払いそれでこれといって身についていないなんて、こんなリスクの多い業界に未来があるとはなかなか思えないのです。

それでも陶芸に見せられ一途にこの道を歩いていきたい。その様な夢を実現したいという若者がいないとは思っていません。どうにかそのような若者を育てられる環境を作りたいと思っているのです。

陶芸界の淘汰

この記事の関連キーワード

乾山写し「芙蓉形向付」に白化粧

こんばんは。暑い日が続きます。この頃は朝起きの時間を早め、一日の始まりも同じ様に早い時間帯に変えています。この暑さに耐える時間割を作っています。

工芸は早寝早起きが似合いますよね。昔ある有名な作家さんですが、夜お酒を飲んで気持が高まったといって、「よし、轆轤ひくよ!」って、夜中の二時から仕事をしたって、聞きましたが、、、。

私にはとんでもない、そんなことしたら身体の時間割が狂ってしまって、その後の仕事はどうにもなりません。人それぞれです。お酒飲んで仕事なんて、それもとんでもない。自分にはできません。仕事の内容にもよりますが、いたって健康的な仕事ですので。

早朝の光を受けること。身体時間というものがあって、それは25時間らしいですね。その一時間の誤差をどうしてリセットするかと言えば、早朝の光を身体に受ける事らしいです。でも私の従兄の画家ですが、長く昼夜逆転の生活をしていますが、いたって健康です。

これもまた人それぞれなのですね。やっぱり私は早朝派です。

工房はすたっふMさんが「幔幕紋深向こう」の絵付けを終えたので、釉薬掛けをして窯入れを急いでいます。また、乾山写し「芙蓉形向付」の型打ちされたものに白化粧を施しました。この仕事も何とか形にしたいと考えています。また、もうひとつ乾山「呉須鉄絵葵紋大鉢」の仕事も急いでいます。

格子紋湯呑が何とか目途が立ったので、今までの京焼きに新しく「呉須」の仕事を加えたいと思います。この仕事を発展させ「オランダ焼」まで持っていきたいと考えています。
仕事が仕事を産んで、人と繋がっていきます。新しい展開を面白く期待しています。

イノセント

こんばんは。甲信越は梅雨が明けたそうです。今日はここも一気に猛暑で、流石大阪!どこよりも暑さは負けへんでぇ、とすごい勢いでした。

昨日京セラドームで行われた「サイモン&ガーファンクル」のコンサートに出かけて来ました。1968年「卒業」のサンドトラックからのファンで、何と言っても70年「明日に架ける橋」はすごいアルバムでした。家に古いハイファイセットが有って、何度も何度も針を落として聞いた頃が思いだされて来ました。まだ中学生で英語の教材にうってつけとばかりにノートに歌詞を写しては、コツコツ訳して見たりもしました。

若者が抱く素直な言葉は、どこか自分の心をあの美しいハーモニーで表現してくれているようで、いつの年齢になっても感動を呼び起こしてくれます。
イノセント。この言葉が耳から離れませんでした。いろんなコンサートに出かけてきましたが、最も感動したコンサートのひとつです。二人の歌声が心の宝物になった瞬間を味わう事が出来ました。

宝物はしみじみ一人で味わうものだと感じました。話し合える言葉が見つからないのです。今日のこのブログもどうしようか、思案していたのですが。
家内と連れ添って30年になりました。SGのコンサートがある、と家内から誘いが有りました。手に入るかどうかわからないが、申し込んでみようと云いました。
いい思い出を作ることが出来ました。言葉にならない共通するシーンを二人で体験しました。これから色々な出来事の中で多くのSGサウンドが心の中で響いてくることでしょう。
イノセント。聖なる歌声を聴くことができました。有難うございました。

工房は今日火曜教室で、窯から出た作品をみんなで鑑賞し賑やかな一日でした。新しいメンバーも参加して、これから暑くなりますが秋に向けての作品作りに精を出します。

イノセント

この記事の関連キーワード

釉薬のテスト窯

こんばんは。湿気の多い状態が続いて、心身とも週末どっと疲れが出てきています。今日は格子紋湯呑のテスト窯を焚くのですが、窯詰めの時も集中が途切れることが多く、眠気が襲ってきます。午後6時無事窯を入れました。

今回は「呉須」(下絵の具で青く発色する)の流れを止めるために二種類の釉薬を調合しました。呉須は釉に溶け込んで美しい青を発色するので、どうしても灰が多い私どもの釉薬では呉須が釉薬と反応し易く、描いた線や絵が原形を留めにくいのです。そこで色々な調合を考えるのですが、本来の釉薬からあまり離れることはできません。また従来持っている透明感を残し、細かな貫入も残してとなると奥の手を使うしかないと思っています。

釉薬の基本的な立て方は、長石、石灰、珪石、カオリン、を5:1:3:1 にすると安定した透明釉が得られます。簡単な立て方で、長石と石灰でも釉薬は作れますが、少しの温度差で透明感が消えたり、融けなかったりと溶融点の範囲が少ないのです。でもっと安定した釉薬となると色々な柱を立てて溶融温度に幅を持たせるのです。

私共の釉薬は灰と長石で作っています。昔ながらの伝統的な釉薬です。灰といっても色々なものがあり、また種類によって成分が変わってきます。この京焼の灰は「樫」がいいとされています。酸化では黄色っぽく焼けます。柔らかなたまご色を作るにはこの灰が一番いいと思います。

今回この調合に藁灰を入れて見ました。藁灰は珪石分が他の灰より一段と多く含まれています。また石の珪石とは違った結晶体が有り、柔らかな質感を産みやすいとされています。

呉須の流れを止める方法は、長石分を増やす、硅石分で溶融点を上げる、カオリン成分で全体をマット化する、また呉須自体の溶融温度を上げる、などなど色々あるとおもいますが、今回藁灰を使って少し溶融点を上げてみたいと考えました。

さて、この調合で、今までの呉須の発色を残し流れを止めることができるでしょうか。結果は月曜日の朝、少しがんばっていきます。

釉薬のテスト窯

この記事の関連キーワード

梅雨に負けず

こんにちは。関西は紀伊半島に記録的な大雨が降っています。ここは雨の多い地方ですが、それでも経験したことのない豪雨に被害が広がっています。この地方の裏に位置する私どもは、豪雨や台風からいつも守られた状態になっています。
今年の梅雨も姿を現して来たようです。これからが本番のようです。

窯準備2009.7.8工房は教室の作品を焼く為、昨日は窯を詰めました。色々な大きさの作品ですが、無事平均に皆さんの作品を入れることが出来ました。

還元焼成で1280度まで上げてみたいと思います。今回は午後11時に火を入れることにしました。午前中別件の仕事が入っているので、その間をあぶり焼きに当ててみようと思っています。新しい焼き方なので、いつ終了するかは焼いてからにあると思います。

窯詰めが終わり先日作っていた「乾山写し芙蓉紋平向付け」の型うちの為、轆轤で三個素地を挽いておきました。今日型うちをしてみたいと思います。
これから、すたっふMさんも来て、格子紋の湯呑のテストを始めます。呉須の流れを止める準備に入ります。

梅雨に負けず

この記事の関連キーワード

視界が広がって来ました

こんばんは。湿気の多い日が続いています。身体の疲れもなかなか抜けない様です。こんな日は睡眠が一番なんでしょうが、蒸し暑く寝苦しい日が続きます。窓を少し開けて寝るのですが、山の冷気はかなりの湿気を伴っていて気が付けば身体に相当負担があって、よけいに疲れが残ってしまいます。
梅雨が晴れない限りこの冷気は取れません。温かいものを取り身体を冷やさないように心懸けています。

工房は教室の作品が溜まってきたので窯の準備に入りました。土曜日に施釉したものを今日手直ししています。還元で焼く予定です。この4年は京焼を専門に作ってきたので酸化窯に慣れてしまいましたが、本来私どもはもっぱら還元窯を焼いていました。特に長石釉を中心に鉄絵や辰砂、時に青磁、磁器などを主に作って来ました。最近HPに京焼以外の今までのものも売れるようになってきました。すたっふMさんがこれはというものを引き出してきて、写真を撮っています。数も少なくなってきましたが当時も細かなところまでこだわって作っているいいものをHPに掲載して参ります。

作品の多くは今まで個展や工房のギャラリーで売って来ました。二年前からHPに作品を掲載し販売するようになり、ウェブ上で物を売っていくにはそれ相当の投資をしていかなければなりませんでした。昨年はそのことに時間もお金もかなり掛けてきました。

最近「和食器」のサイトでトップに位置するようになり、徐々に変化が起こって来ました。この変化とともに私どもは従来してきた仕事を再認識し、新たに京焼で開発してきた多くの作品も一歩進めていくことでしょう。

地平線が広がったと思います。今までのキャリアを元にステップの効いた感覚のいい作品を多く作ろうと思っています。

視界が広がって来ました

この記事の関連キーワード

ライン建設中です

こんばんは。7月になって本格的な梅雨になって来ました。各地で大雨が災害を起こしていますが、皆様の所は如何でしょうか。ここ関西は最近激しさを増してきたように思います。しとしと降る梅雨なんてもう何年も経験していません。激しい変わりようは今の世の中を象徴しているようで、大きな変化を予感します。

人の心と自然とはどこか連動しているようです。大雨、猛暑。この夏は厳しいと思います。混迷が続く政治もいよいよ末期の様相を呈してきました。私はいつも変化を求めるタイプなので、どんどん激しく変わることを求めていますが。

工房は色々な仕事が重なって来て一度整理しなくてはならない状況です。今日は乾山陶器葵紋大鉢の水挽きを市ました。この位の大きさ、と手で示された大まかな要望だったので、何個か高低差を付けて、三個を水挽きしました。

HPから色んなメッセージを頂きます。京焼の検索より、最近は「和食器」部門でかなり優位な位置にいるので、そこから入ってきてくれる人が多くいます。そのせいか京焼に限定する仕事よりも幅広く色々な作品を購入してくださいます。

私共の仕事の中にひとつ大きな柱があります。紅い釉薬で「辰砂釉」と呼ばれるものです。独自に長年掛けて作り上げてきた釉薬です。今日ある材料の中で最高とされる灰や長石を使うのですが、昨今の材料不足は深刻で、この釉薬に使われるものもすでに廃業されたところもあって、どうしても入手できない状況です。在庫が少し残っているので10キロ位は釉薬を作ることができます。最近HPからも辰砂釉の作品が売れるようになってきて、今一度この作品が作れるラインを検討しています。

工房は今大きく3本のラインを建設中です。全体がスムーズに機能するにはかなり手間が必要だと思います。
弟子入り希望者、歓迎いたします。